小雪
しょうせつ菓銘 『木枯らし -こがらし-』
きんとん(小豆・薩摩芋) | 小倉餡
雨が雪に変わり、遠くの山の頂きに雪が見える頃。まだ雪がちらつくことがない地域でも、風の冷たさに身をすくませて足早に歩く人の姿が見られます。
「木枯らし一号」は晩秋から初冬にかけて関東と近畿で観測・発表される季節風です。冬型の西高東低の気圧配置になり、北寄りの風速8m以上の強風がその年初めて観測されたときに認定されます。関東では10月半ば〜11月末まで、近畿では霜降から冬至までと期間が定められていて、吹かなかったとされる年もあります。
二十四節気を三分割した七十二候のこよみでは小雪の間に「朔風払葉きたかぜこのはをはらう」という候が入ります。冷たい北風が木の葉を散らすと本格的な冬の到来、そのはじまりです。
この頃になると厚手のコートをいつから着るかで迷う方も多いでしょう。薄手のコートでは寒いけれど、早々と冬のコートを着てしまったら真冬に耐えられるのかと頭をよぎります。ですが、この時期のからだはまだ寒さに無防備で隙だらけ。迷わず温かいコートに切り替えてください。真冬ほど寒くなくても体感温度は低く、うっかり風邪をひきやすい時期です。
北風に隙を見せないよう、3つの首を守るアイテムは一歩外に出る前に身につけて。脈を取れる手首は動脈が皮膚に近く皮下脂肪も少ないため、冷えが侵入しやすい部分。首の太い動脈や冷気が溜まる足元も要注意です。室内でも付けて温めると動きやすく、億劫な気分も和らぎます。パソコン作業には指無し手袋がおすすめです。
カゼはひきはじめが肝心
寒さや乾燥、エネルギー消耗など、ウイルスに無防備になる条件が揃ってくる頃。カゼのサインに気づいたら間髪おかずに対処するとひく前に治せます。カゼの漢方薬もひきはじめに使うもので、合うものを携帯してすぐ服用すると1,2包で済みますが、悪化してから服用しても効きません。
のどがヒリヒリする、鼻の奥に違和感を感じる、ゾクッと寒気がする。いずれもカゼのひきはじめ、からだが抵抗力を高めてウイルスと闘おうとしているサインです。免疫機能は平常の体温よりも高い温度でよくはたらくので、発熱、のどの痛みや鼻の違和感をもたらす炎症、筋肉が震えて熱を生み出す寒気などが生じます。
闘うために熱が必要、ならば外から熱を与えて加勢しようというのが寒さからくるカゼの対処法の共通点です。
背中の冷感や肩コリに気づいたらすぐに首の付け根の少し下にある「風門ふうもん」のツボを温めてください。カゼの出入り口とも言われ、防御の応援がしやすいところです。貼るカイロが手軽ですが、剥がしたあと薄着になると逆に侵入しやすくなるのでしっかり着込める状態になってから取りましょう。
予防として常に貼るのはおすすめしません。風門の近くには寒冷刺激で熱を生み出そうとする褐色およびベージュ脂肪細胞が存在し、必要以上に温めているとそのはたらきが鈍ってしまうためです。起きている間はしっかり防寒しながら温めすぎないのもからだに備わる抵抗力を高める方法です。
背筋を伸ばし、肩甲骨を動かすように肩を回して筋肉を動かすことも間接的なカゼ予防になります。背中の筋肉が薄かったり猫背で背筋を使わずにいたりすると生み出せる熱量が乏しく寒さの影響を受けやすくなります。
カゼ予防や安眠にも有効なのは寝る前の「小豆のカイロ」。心臓から押し出された血液は背骨に沿って守られるように走る大動脈を通って内臓や下半身へとめぐります。寝床に敷いて背中に当てると太い血管の血流に乗って徐々に温かさが広がり、温泉に入ったときのようにポカポカしてきます。
のどの痛みや腫れ、高熱からはじまる熱性のカゼはウイルス以前にからだの潤い不足があります。多忙で睡眠や食事など休息を後回しにしているとオーバーヒート状態でからだが乾燥し、ウイルスと闘いはじめると枯れ葉に火がつくように一気に熱感が強まります。むやみに温めず、水分や栄養をたっぷり補給して早めに休むのが一番です。
カゼと闘う体力や免疫機能は年齢とともに低下し、熱を上げるパワーがなくなったり、調子が十分に戻りきらなくなっていったりもします。風邪は万病の元、防ぐに越したことはありません。手洗い・うがい・鼻うがいでウイルスを洗い流したら、温かなごはんとゆったり入浴、十分な睡眠でエネルギー補給と温存を。ウイルスと闘うリンパ球もリラックスモードで増えます。年の瀬に向けて忙しくなりますが、どうぞからだ第一でお過ごしください。
- 冷えたら背中を温める
- 過保護もカゼを招く
- 体力の温存が一番の予防策
歳月を身籠もるひとの息白し
冬の朝、一歩外に出た時に吐く息が白く見えることがある。人それぞれに重ねた年月の温かな体温が厳しい寒気の中で息づいている。(季語:息白し)
作:志田円/「自鳴鐘」同人