雨水
うすい菓銘『水温む -みずぬるむ-』
羽二重製|備中白小豆こし餡
雪が雨に、氷が水に変わりはじめる頃。冬型の気圧配置がゆるむと太平洋側では低気圧が通りやすく、湿った大気が流れ込んでみぞれになることも多い時期です。北国に降る雪も次第に湿り気を含んだ牡丹雪が混じるようになります。
寒の入りを迎える頃からぐっと増していた水の冷たさは雨水の間にわずかにゆるみはじめます。それは日頃皮膚を切るような水に手をさらしている人の脳裏に、今朝はどことなく和らいだような、と一瞬かすめていく程度の萌しです。
菓銘にある「水温む」の解釈には幅があり、4月に入っていよいよ誰もが温むのを感じる頃、桜を浮かべてゆるやかに流れる春の水に重ねた形でもよく見かけます。けれど、かすかな変化に目を留める感受性を尊び、その細やかな真心をもって尽くすもてなしのしるしや心通わせる「ことば」として用いてきた日本の情緒を映すには、まだ凍えるような冷たさの中に感じる温もりこそ「水温む」と表すにふさわしいように思います。
初秋のまだまだ残暑が厳しい折、夏のあいだ湯のように温まっていた水道の水がわずかに冷たさを含んだそのとき「秋の水」という銘が頭をよぎったことを思い出します。半年に一度、ほんの一瞬心に触れて過ぎ去っていく、目では捉え得ぬ時の移ろい。それを感ずる心の柔らかさを保つためにこそ淡々とくりかえす日々の水仕事があるのではと思うほど淡く、それでいて心に確かなものを残していく季節の便りです。
陽を受けて温みはじめた水は草木の発芽を促します。春の萌しを求めて外に出てみませんか。
寒暖にゆらぐ気圧への抵抗力を高める
天気痛や気象病という言葉をよく耳にするようになってきましたが、寒暖のゆらぎとともに気圧の変化が続く春先は頭痛や関節痛、めまいや吐き気、むくみや倦怠感などの症状で毎年お悩みの方も多いでしょう。
お天気が崩れる少し前から気圧が低くなる=大気の圧力が弱まると、からだでは内から外へとはたらく圧力が強くなります。血管の中でも外へと押し広げる力がはたらいて拡張すると低血圧になったり神経を刺激して頭痛が起こりやすくなったりします。
そうした気圧変化に応じて血管の広がりを適度に抑えるのは自律神経の交感神経の役割ですが、日頃から緊張状態が続いていると血管の伸縮性が弱まって十分に調整できず、不調が続きやすくなります。使い続けていたゴムが伸びきって伸縮性というゴムとしての機能が失われてしまうようなものです。
また、からだの水分バランスも血管の内圧が変わることで影響を受けます。毛細血管から細胞間に漏れ出す水分が増えて回収されずに停滞するとむくみが生じます。倦怠感を感じやすくなる他、内耳がむくみ血行が悪くなると気圧変化に過敏に反応してめまいの一因になります。
血管が広がると重力で下半身に血液が溜まりやすくなります。第二の心臓と呼ばれるふくらはぎの筋肉が少なく運動不足も重なると押し上げるポンプの力が足りず、老廃物を回収する静脈の流れが滞ります。すると足首から膝下にかけて皮膚のかさつきやかゆみ、湿疹が広がる原因になります。
こうした症状は日々の生活習慣が大きく影響するので一朝一夕には解消しにくいですが、今回は食事面から心掛けたいポイントを3つご紹介します。
一つ目は水分の摂りすぎや食べ過ぎに注意。必要以上の水分はむくみの元。蓄えて守る冬モードの食べ方も老廃物や水分の排泄を妨げます。ゆらぐ寒暖への対応でエネルギーを消耗しやすいので胃腸への負担を減らす方が体力を温存できます。寝る前の食事も控えめに。
二つ目はあっさり味の温かいものを中心にすること。糖分や塩分などの味の濃いものは余分な水を引き寄せて滞らせる原因に。冷たいものはおなかの中で温めながら消化するためエネルギーの消耗につながります。
三つ目は筋肉の原料でもあるたんぱく質を積極的に取り入れること。血管内に水を引き入れるアルブミンのはたらきも手伝ってむくみや低血圧の緩和につながります。運動後や毎食欠かさず摂ると効果的。脂肪分が多い肉や乳製品に偏ると消化に負担がかかるので魚や卵、大豆食品を上手に取り混ぜて。たんぱく質は一般的に消化しにくいので、よく噛んでゆっくり食べましょう。リラックス効果も期待できますよ。
- 飲食量を調節してエネルギー温存
- あっさり味で不要なものを出しやすく
- たんぱく質+運動で水の偏りを和らげる
薄氷の下の紅鯉巫女衣
薄氷は春先、ごく薄く張る氷をいい、また溶け残った薄い氷もいう。池の氷は薄くなり、静かに泳ぐ紅鯉はまるで巫女衣を纏っているように見える。(季語:薄氷)
作:志田円/「自鳴鐘」同人