芒種
ぼうしゅ菓銘 『初蛍 -はつほたる- 』
吉野羹製
芒種は稲など芒のある穀物の種まきや田植えをする頃。芒のぎとは稲や麦など穀粒の先端についている針状の毛のことです。
今では天気のよい5月中に田植えをすませるところも多いため少し遅いように思われますが、それは現代の感覚にすぎません。品種改良や機械・ハウスなどの恩恵が受けられるようになるまではすべてが田の神頼み、自然まかせでした。
発芽に適した気温になる五月初めの八十八夜の頃に種籾を蒔き、ひと月余りで田植えに用いる早苗に育ちます。そして田んぼに張る水をもたらす豊かな雨や苗がすくすくと育つ水温など、生育条件がそろうこの頃を待って田植えをしていたそう。
田んぼに棲む蛍、ヘイケボタルが草陰からふわりと飛びはじめるのはこの頃。雨の日の前後、曇りがちで蒸し暑い日に多く、昔は暑さに蒸れて腐った草が蛍になると思われていたとか。蛍狩りにおすすめの時間帯はお夕飯後のそぞろ歩きにぴったりな19時半〜21時頃です。
川辺に棲むゲンジボタルは少し早く5月下旬から見られます。温暖化のためか、近年は蛍前線が早く過ぎていく年もあるようです。(時期については地域によって多少前後します。)
湿気の重だるさを外から内から軽くする
じめじめと蒸し暑い梅雨時。むくみや重だるさ、頭痛や頭重感、ぐるぐるとしためまい、食欲不振や吐き気、おなかを下しやすい・・・どんよりとした大気のようにからだもこころも調子が上がらない時期です。症状はさまざまでも原因のひとつは高すぎる湿度です。
中医学ではからだは環境の湿気の影響を受けると考え、悪影響をもたらす場合「湿邪しつじゃ」と呼びます。雨で冷えると血行が鈍ったり、湿気で汗の蒸発が妨げられると余分な水分が排泄しにくくなります。
外の湿気は変えようがないものの、お部屋の中は除湿機や空調の除湿モードで湿度をコントロールすることで不調が和らぐ方もいます。一日の1/4〜1/3を過ごすお布団の湿気も見逃せません。寝苦しさを感じている方は布団乾燥機もおすすめです。
湿気の影響を流す方法のひとつがお風呂。湯船に浸かって皮膚の血行が良くなるとからだ全体の血液循環や水分代謝を助け、自律神経のメリハリがつきやすくなります。じんわり汗をかけるとすっきりしますが、汗をかきにくい方は汗が出るまで温度を上げたり長湯をしたりする必要はありません。ショウブ湯のようにアロマを取り入れるのもおすすめ。蒸し暑いときにおすすめのパチュリの他、お肌がほてるならミント系もお手頃です。
また、特に症状が出やすいのはもともと溜め込みやすい方。食べ過ぎや消化の悪いものは水分を含む食べ物がからだに長く留まりやすく湿邪のひとつと考えられています。生ものや冷たいものは消化を鈍らせるのでお食事は温かいものを中心に。味の濃いものや甘いものは水を引き寄せてしまうのでうす味がおすすめ。おかゆや発酵食品、ネバネバしたものなどもこの時期は控えめにすると楽になる場合があります。
梅雨前線と同じく胃腸のはたらきも停滞しやすい時期なので、必要以上に水分を摂り過ぎていないか、口に入れる前にからだから出しやすいものかどうかを考えてみるのも良いですね。小豆や黒豆などたんぱく質豊富で利尿作用をもつ豆類、排水を助ける海藻やウリ系の野菜、発汗を促す香味野菜もむくみを和らげるのに効果的です。
- お部屋の除湿とお風呂で湿気の影響を減らす
- 「湿は湿を呼ぶ」食習慣で溜まる体内の湿も要チェック
- うす味のあっさりした食事でめぐりやすいからだに
蛍火をゆだねられたる腕となる
蛍狩りに行く。蛍の飛び交う姿をただ立ち尽くすばかりに眺めていると、ふわりと一匹の蛍が腕の中へ。わが腕で明滅する小さな命。自然から愛しいものをゆだねられた。(季語:蛍火)
作:志田円/「自鳴鐘」同人