夏至
げし菓銘 『四葩の花 -よひらのはな- 』
錦玉羹製|レモン餡
昼の時間が一年でもっとも長くなる頃。二十四節気における夏はこの夏至を中心に前後1か月半ずつの3か月を指します。日の出は格段に早く日の入りもずいぶんと遅くなりますが、それもそのはず、冬至に比べて4時間半以上も長く日が昇っているのです。
梅雨のさなかで雨雲に覆われる日も増えますが、心なしか明るさを感じるのは雲の上で太陽が輝きを増しているからかもしれません。直射日光は少ないものの分厚い雲にふさがれて逃げ場を失った熱とよどんだ湿気に身は重く、気が詰まるように感じることも。
沈みがちになる心を和らげるのは色とりどりの紫陽花、別名 四葩の花。水をたっぷり吸って咲くためか、梅雨の初めより中ごろ、晴れの日より陰る日の方が明るく鮮やかに感じます。育つ土壌で色合いが変わるのも見飽きないですね。
和菓子屋さんでもきんとんや練切、求肥など各店さまざまな紫陽花が咲いていますが、こちらは錦玉羹でおつくりしました。寒天に砂糖をしっかり入れた透明感のある錦玉羹を角切りにして餡玉につけ、四角いがくが集まる様を映すのは定番の手法。餡玉をいくつかの色に染めて移り気な紫陽花に仕上げています。
すっきりお通じで涼しいからだ
陽気が盛んになるにつれ気をつけたいのがお通じです。特に固く出にくいタイプの方はからだの潤いが不足しやすく余分な熱がこもって鈍っているのでこれからの季節は要注意。詰まっていることで熱をうまく排出できず、ますますからだが熱く感じられるので真夏を迎える前のケアがおすすめです。
するっと出て切れが良いお通じは7割が水分。大腸で脱水されてからだの水分量と同じくらいになると程よい固さになります。固くなりすぎる原因のひとつはからだをめぐる水分量が足りず、便から回収される水分が多いため。また、大腸に留まっている時間が長いほどさらに脱水が進んでさらに固くなるので、ますます腸ががんばって動かないと押し出せなくなります。
寒天にも多く含まれる食物繊維はその水分を便の方に引き込む役割をします。水溶性はゲル状になって便を柔らかくし、不水溶性は水分を吸収しカサを増して腸の動きを促します。ただし、食事の量が少ない方、栄養不足で消耗しやすい方は食物繊維を摂りすぎず良質な油やナッツを少し足す方が改善しやすい場合があります。
根本的な改善にはからだの潤いを補いつつめぐらせることが欠かせません。立夏でもふれたように、からだの潤いや栄養は食べ物からつくられます。また、からだの中をめぐるのは体温と同じく温かいもの、冷たいままではめぐりません。消化吸収を良くして潤いや栄養を確保し必要なところに届けるために、夏でも火の通った温かい食事を中心にすると負担が少なくなります。
もうひとつ、昼が長く自然と活動的になる季節だからこそ心掛けたいのがこころとからだを休ませる時間です。起きている時間が長いほどからだの潤いは消耗しやすくなるので十分な睡眠が特効薬。
また、お通じはリラックスしているときに動きます。活動モードのときは腸の動きも鈍く出口も締まってしまいます。特に慌ただしい朝は一気に活動モードに切り替わりやすいとき。朝食を合図にお通じが動くのを少し待つくらいのゆとりをもてるよう一日のスケジュールを見直すのも一案。頻度や固さが安定しない緊張型の方にもおすすめします。(今回のお菓子にも緊張を和らげる柑橘の果皮を使っています。)
- お通じ改善で熱のこもりにくいからだに
- 温かい食事と睡眠でめぐる潤いを確保する
- 緩急つけてトイレタイムはリラックス
身の透けて改まりたる茅の輪かな
陰暦六月晦日に行われる夏越し祓は、茅の輪をくぐり半年のけがれを祓う。くぐる瞬間、誰しも少し緊張し、けがれを落として透明な心身となっていく。(季語:茅の輪)
作:志田円/「自鳴鐘」同人